朝日の柔らかな光の中で、静かで繊細な香りがそっと吹き抜けます。それは、復活したグラースのジャスミン畑から届く香りです。
白い花から抽出されるジャスミングランディフローラム・アブソリュート(Jasmine Grandiflorum Absolute)は、柔らかで感受性豊かな香りを持ち、近隣の柑橘系の香りと調和し、完璧なバランスを生み出します。
19世紀後半、香水産業がゆっくりと頂点に向かう中、グラースのジャスミングランディフローラムの香りは、この産業に多大な貢献を果たしました。著名な調香師ジャック(Jacques)が手掛けたイッセイミヤケやジャン=ポール・ゴルチエなどの香水作品には、ジャスミングランディフローラムが欠かせない要素となっています。
ジャスミングランディフローラムの香りには、幸福を伝える究極の美しさがあり、嗅いだ瞬間に動物的な香りを伴う情熱やエキゾチックな魅力が私たちの心を揺さぶります。
プロヴァンスではラベンダーやチューベローズと隣接して栽培されており、南アジア、特にインドの湿度の高い地域で育つジャスミングランディフローラムと比べ、地中海性気候で育つジャスミングランディフローラムの香りには、一層清楚で高貴な印象が加わっています。
19世紀初頭、グラースではジャスミンが非常に人気を集め、その商業栽培面積は100ヘクタールを超えていました。一重咲きの星形の五弁花は夜から朝にかけて咲き、農家や作業者たちは太陽が高く昇る前に収穫を終えます。その後、伝統的な脂肪吸着法(enfleurage)で抽出し、エタノールで浸漬してアブソリュートを得るのです。このアブソリュートは、華やかで優雅な香りを持ちます。しかし、1929年のフランス経済危機の影響で、グラースの華麗なジャスミンの香りは衰退し、ジャスミン畑はナイル川デルタ地帯へ移転しました。
それから数十年の時が経ち、グラースの調香師たちはエレガントなジャスミングランディフローラムへの思いを忘れることなく、若い農家たちが故郷へ戻り、復興という困難な使命に挑みました。小規模生産者として再びスタートを切り、グラースジャスミングランディフローラムの香りの旅が再び始まったのです。